古くから紡績業の盛んな愛知県三河地方。岡崎市に拠点を置く大法紡績有限会社が紡ぎだす「冷えとり」をコンセプトにした五本指ソックスやスパッツといった商品がインターネット販売を中心に人気を集めている。同社も参加する地域ブランド「サムライ日本プロジェクト」の総合プロデューサー・安藤竜二が、同社代表・山﨑憲伸(やまざきけんしん)の「ものづくりへの想い」に迫った。
ユーザーは社長自身。品質に妥協なし
安藤竜二(以下安藤) 大法紡績さんって名前にある通り、紡績屋、つまり糸を作っているんですよね?
山﨑憲伸(以下けんしん) はい。製品によっては糸から製品まで一貫して作っているものもあります。こういった会社は他にそうはありません。品質の悪い糸を作れば、結果的に自らの首を絞めることになりますから、悪い仕事はできませんね(苦笑)。軍手や靴下、スパッツなどの商品があり、それら全てを糸から作っている訳ではありませんが、一貫製造の紡績屋としてのプライドと製品へのこだわりは全ての商品に息づいています。
特に五本指ソックスをはじめ、「冷えとり健康法」(※1)をテーマにした商品は私自身がユーザーですから、よりよいものを妥協なく追求していますね。使い手の感覚を大切にしながら、「かゆいところに手が届く」商品開発を心掛けています。
安藤 けんしんさんといえば「五本指家族」のホームページが印象的ですが、五本指ソックスを愛用するようになったきかっけは?
けんしん 22年前、水虫になったのがきっかけです(苦笑)。色々な薬を試しましたが、一向に治る気配もなく。ある日、取引先の人に打ち明けると「いいものがある」とすすめられたのが五本指ソックスでした。当時はまだ、注目されてはいませんでしたが、30年以上前から五本指ソックスはあったようです。半信半疑ではい てみたら、1週間で嘘のように水虫が治ってしまった。これはいいぞと毎日はくようになったのですが、市販のものではなかなか満足いくものがありませんでした。
当時、大法紡績では軍手を作り始めていましたから、その編み機を応用してオリジナル五本指ソックスを作ってしまおうと考えました。こだわりは何といっても「はき心地」。肌に密着するものだから化学繊維でなく天然繊維がいい。しかし、肌触りを重視して絹100%で作ってみると、すぐに穴があいてしまう。耐久性を重視して綿100%で作ってみると、肌触りがイマイチで冷たい感じがする、など試行錯誤の繰り返し。最終的に、靴下の内面には吸汗速乾性が高くて肌触りのよい絹、外面には耐久性の強い綿という二重構造に辿り着きました。
安藤 今や大法紡績さんを代表する二重構造技術はこうやって生まれたんですね! 評判はどうだったんですか?
けんしん 当初は販売の予定はなく、知人友人に配っていたのですが、評判は上々。「色のバリエーションが欲しい」といったリクエストもいただくほどでした。「これはいけるのでは」と、従来の「かかとなし」靴下でなく、「かかと付き」靴下専用の編み機を2台購入(当時1台200万円)。これが普通の靴下なら左右の区別がないので1台でいいのですが、五本指ソックスでは左右それぞれに1台ずつ必要だったんです。また、色の問題では素材が絹と綿の2種類ありますから、1色で2種類の糸を用意しなければならないということもありました(現在「絹木綿シリーズ」で全20色以上を用意)。
それからしばらく、自身がモニターとなってよりよい五本指ソックスを追求し続けました。そして平成7年、商品の特徴を表した「絹木綿」という名で販売開始。鍼灸や整体といった治療院で販売してもらうため、全国のタウンページをみて片っ端からサンプル品を送りました。反応はなかなか良かったのですが、インターネット普及以前ということもあり、広告には膨大なコストがかかっていましたね(苦笑)。
持病を克服した「冷えとり」グッズ
安藤 そこから「冷えとり健康法」に着目した商品を作るようになったきっかけは?
けんしん 平成19年4月、医者に血管の痙攣によって起こる「異型狭心症」と診断され、私の場合は治療不可で、薬で発作を予防するしか方法がないと言われていました。しかし、毎日薬を飲み続けても発作は収まりませんでした。ある晩、就寝中に発作がおきた時には、妻が気付いてくれなかったら命が危なかったのでは、と思ったこともありました。
その年の7月、弊社の五本指ソックス「絹木綿」を販売してくださっている治療院の先生が工場に挨拶に来られたことがありました。その時、私の病気のことを話したら「すぐに靴下を6枚はいてください!」「社長に倒れられたら私も困る!」と形相を変えておっしゃられたんです。
弊社の「絹木綿」が「冷えとり健康法」を実践する人の間で好まれていることは知ってはおりましたが、私自身は信じていませんでしたし、何枚も靴下を重ねてはくつもりも全くありませんでした。しかし、先生が「どうしても!」と引かないので、まぁ自社の製品だし、騙されたと思って絹木綿を6枚はくことにしました。
冷えとり健康法では絹と綿のソックスを交互にはき重ね、重ねるほど効果が高いとされています。「絹木綿」は1枚で表面が綿で裏面が絹となっているので1枚で2枚分の効果があり、また、伸縮性もあるので、重ねばき効果が高く、人によっては8枚、10枚という人もいらっしゃるようですが、正直、6枚の重ねばきでも私には苦痛でした。一応1枚でちょうどフィットするように作ってある商品ですからね(笑)。
そこで「重ねばきしても快適なソックス」をコンセプトに、開発を開始。締め付けやゆるさがないように一足一足を微妙にサイズを変え、絹と綿の二重構造はそのままに、より薄く伸縮性の高い靴下を。こうして、重ねばき専用の6足組ソックス「健康組曲」が完成しました。
「健康組曲」をはき始めて3カ月ほどで、長年の悩みであった心臓が悪い人特有の「空咳」が出なくなり、周りの人からも驚かれました。半年経った頃には、発作の回数も減ってきて、飲み続けていた薬を止めても大丈夫でした。「冷えとり効果」を確信せざるを得ない出来事でした。ついでに「健康組曲」の効果も実感できました(笑)。
1年後には「冷えとりスパッツ」を開発。これをはき始めてから発作はなくなり、現在まで2年間、一度も出ていないんですよ。
安藤 「サムライ日本プロジェクト」に参加された当時(2008年2月)より、随分痩せられたんじゃないですか?
けんしん 7キロ痩せましたが、生活自体は特に何も変えてないんですよ。健康組曲と冷えとりスパッツをはいて、半身浴をするようになったくらい。新陳代謝が良くなり、身体の中の不要なものが排出されることで、結果として痩せたのだと思います。
安藤 量産品とは別物、とは分かっていても「5足1000円」といった価格と比較すると、割高に思えてしまうんですが、もう少し安くはなりませんか?(苦笑)
けんしん そうですね(苦笑)。上質な絹を使用していることや綿との二重構造の技術についてはご説明した通りですが、弊社の商品はそのこだわり故に、どうしても時間と手間がかかってしまうんです。
例えば「絹木綿」は、機械を「低速」に設定して編んでいます。大量生産を目的に「高速」で編んでしまうと、製品の風合いや伸縮性が損なわれてしまうんです。
「健康組曲」や「冷えとりスパッツ」のような立体無縫製の商品は、さらに時間がかかります。それは人間の身体のカーブに合わせて、太く、細く、締める、緩めるなどの変化をつけるため、一つの商品で何度も機械を止めながら作るからなんです。
時間と手間をかけたこれらの作業によって、「身体・足にちょうどフィットする立体感」と「手編みに近い感触」が実現できます。ただし、この方法では一日に編める数は限られてしまい、悲しいかな、製造コストが上がってしまうんです。
そこで、インターネットによるダイレクト販売や、小売店に直接卸すことで中間マージンを省くなど、できるだけお安くご提供できるように努力しているんですが、お客様の第一声の多くは「高い!」というお叱り(苦笑)。でもその後で、足へのフィット感が絶妙、締めつけないので体が楽でとても温かい、一度はいたらやめられないといったお褒めの言葉もいただけるんですよ。ご愛用いただいているお客様のブログなどでも、好評のお言葉を目にする機会が増え、口コミで広まっているというお話も耳にするようになりました。
安藤 商品についてお客さんの反響はいかがですか?
けんしん おかげさまでメールや手紙でたくさんの喜びの声をいただきます。「何十種類と試したけど大法さんの靴下が一番」といった声や、不妊で悩んでいたお客様からは「子供ができました」という声も。「平熱が上がった」というお話も聞いています。体温が上がると、免疫力がアップするそうですね。中には自律神経失調症や無呼吸症候群が改善したとか、にわかには信じられないようなお話もありました。
私のように、わらにもすがる思いで、病気を改善したいと思っている人からもご注文いただいています。大量生産品では満足できない人は、必ずいますからね。
安藤 困っている人の役に立つ商品! 素敵ですね! 最後に今後の展開を教えてください。
けんしん 従来、困難だった絶妙なフィット感を実現できる、ものづくりのプロだからこその設備(※2)と技術が弊社にはあります。最近もその技術を応用した天然素材快眠枕を開発しましたが、今後も業界をリードする冷えとり製品を作っていきたいと思います。これにより、健康な人が増え、医療費削減に繋がれば最高ですね(笑)
(※1)愛知県小牧市に住む医師、進藤義晴氏が提唱する健康法。半身浴や靴下の重ねばき、腹八分目などを推奨する。身体の「冷え」をなくすことで、免疫力・自己治癒力を高めるという考え方。
(※2)多くのアパレルメーカーがニットを製作する時などに活用する、株式会社島精機製作所の立体無縫製編み機(およそ1200万円)を2006年、靴下メーカーとしては異例の導入。「健康組曲」や「冷えとりスパッツ」等、冷えとりアイテム製作に使用。
山﨑憲伸
大法紡績有限会社 代表取締役
創業昭和三十年、紡績業のみならず、こだわりの冷えとり製品で社会貢献企業を目指す。社長の山崎は岡崎市議会議員も務める。今日も6足の靴下をはきながら、2足のわらじをはく。
大法紡績有限会社
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