社長の自叙伝

社長の自叙伝
2017年08月17日

株式会社たちばな 代表取締役社長 松本亮治

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1998年(平成10年)の最盛期には1兆9千億円規模であった呉服市場も、2013年(平成25年)には、3千億円規模にまで減少。生活スタイルの変化や、リーマンショック、業界大手の会社の相次ぐ倒産など、厳しい状況に立たされている呉服業界であるが、あるアンケートによると、9割の女性が機会があれば着物を着たいと思っている。ただ、着る場所が無い、着物を持っていないなどの理由で、着る機会を逸しているだけでないか、と株式会社たちばなの代表取締役社長・松本亮治は考えた。気軽に楽しんでもらうこと、着物を着る機会を創出することが大切であると、ネットレンタル事業を全国へ発信することを決意。『着物365』ブランドを立ち上げ、レンタルサイト『着物レンタル365』とお手入れサイト『着物お手入れ365』をオープンさせた。その想いに、叩き上げブランディングプロデューサーの安藤竜二が迫った。

家族の幸せづくりを応援

安藤竜二(以下安藤) たちばなさんの歴史について教えてください。

松本亮治(以下松本) 1954年(昭和29年)、祖父が長野県鬼無里村(現:長野市鬼無里)で松屋洋品店を創業したのが始まりです。創業の精神の原点である『人の役に立つこと』を考え働いていたため、商いは上々であったそうです。その後、父が洋品店に入社。店舗の改装や、洋品店を会社組織化し、売上を3倍ほどに伸ばしました。当時呉服も扱っており、呉服であれば長野で勝負をしたいと考え、1979年(昭和54年)長野市に株式会社たちばなを設立しました。2013年(平成24年)には創業60年を迎え、長野県、新潟県、山形県にたちばな12店舗、フォトスタジオシャレニー8店舗を構えています。

安藤 松本さんが入社されたのはいつでしょうか。

松本 私が入社したのは1998年(平成10年)、新入社員として入社、営業からスタートしました。当時は、年間売上が41億円に達するなど、売上のピークを迎えておりました。ただその年を境に売上が年々減少していきます。私自身も店舗に配属されていたのですが、路面店ということもあり、待っていてもお客様は来ません。そのため訪問や紹介での営業をしていたのですが、この販売の仕組みと時代との矛盾を徐々に感じるようになりました。どうやったらお客様が来てくれるのか、たちばなの強みは何か、必死で考えました。そこでお客様がいるところに出店しようと、ショッピングモール内に出店しました。さらに、フォトスタジオも新たに開設したのです。

安藤 今まで呉服を中心に販売していた、たちばなさんの転換期となるわけですね。

松本 そうなんです。2002年(平成14年)、たちばなは大きく変わりました。まず経営の機軸を「きもの文化伝承力」「アニバーサリー支援力」「新規開拓力」「商品・企画力」「人財育成力」「プロの技術力」という6本の矢を強くしていくことで、地域に必要とされる会社であり続けようと決めました。もともとフォトスタジオは呉服を扱うたちばなにとって、ライバルでした。その場で着物を借りて写真を撮ってしまうのでは、着物は売れませんからね。ただ、たちばなの原点は「着物ファンを増やしたい」「家族の幸せづくりを応援したい」ことにあり、それならばレンタルでもフォトスタジオでも実現できるのではないかと考えました。呉服屋である強みを活かした衣装力のあるフォトスタジオ『シャレニー』の誕生です。

安藤 着物を売るだけではなく、着物の「こと」を売ることも考えられたんですね。フォトスタジオを始めて何か変わったことはありますか。

松本 着物を売るという商売から写真を売るという商売のちがいに苦労しました。しかしあるとき、着物を購入いただいている顧客であったお嫁さんとお祖母さんがお孫さんを連れてスタジオに写真を撮りに来てくれたのです。親子三世代でのお付き合いが始まるようになりました。フォトスタジオを通じて、新しい世代のお客様が足を運んでくれるようになったんです。

安藤 家族の幸せづくりを応援したい、というたちばなさんの想いが1つの形になりました。着付け教室や、様々な企画も行っているということですが。

松本 着物を着ていただく機会を増やすために、地元のフリーペーパーとの合同企画で「和み塾」というのを開催しています。この会では、会員さんが着物を着て毎月集まり、毎回様々なテーマを学ぶことで和の文化に触れる機会を作っています。また、2ヶ月に1度、各店がお客様と一緒に着物で出かける機会を作るため、「着物を楽しむ会」という会を全店で実施しています。11月15日のきものの日には、お宮参りや七五三・成人式・結婚式・お葬式などの人生の通過儀礼をモチーフに、着物を中心とした衣装を着た社員とお客様の総勢100名で「きものパレード」を行っています。さらに、たちばなでは長野県・新潟県を中心に11の着付け教室を運営しており、月間600名以上の方が受講し、着物を楽しんでいます。

着物365ブランド誕生

安藤 松本さんは2009年(平成21年)に代表取締役社長に就任されたとのことですが、新たに取り組んでいることを教えてください。

松本 女性にアンケートをとると9割の方が機会があれば着物を着たいと思っているとの回答があります。たちばなでは、着物の着方が分からない、保管が大変、などの要因や、着物を持っていないなど、着る機会を逸しているだけではないか、さらに着る機会がない中で着る機会の創出も必要であると考え、数年前より着物のレンタル事業を始めました。2010年(平成22年)から始まった「着物レンタル1万円」を機軸とした長野県内のテレビCMで火がつき、当時100件ほどしかなかった着物レンタルが、初年度で1000件、翌年は1700件までの事業として拡大しました。2013年(平成25年)7月には、もっと多くの方に気軽で簡単に着物がレンタルできるように、『着物365』という新たなブランドを立ち上げ、そして、全国へ向けてネットレンタルサイト『着物レンタル365』を開始しました。

安藤 『着物365』とはどういう意味なんでしょう。

松本 私達は、着物はけっして特別なものではない、と考えています。着物は、昔から日本の文化をつくり、日本人の生活とともにありました。卒業式や成人式などのとても特別な日だけでなくてもいい、ひさしぶりの友人と会うとき、ちょっと気分を変えたデートのとき、家族が集まる日にも、365日、誰かの「ハレの日」があります。着る人の数だけ、「ハレの日」があり、着る理由があり、着る楽しみがあっていい、と。365日、今日もどこかで「ハレの日」を祝う人を、たちばなは着物で応援したいという想いで、『着物365』としました。

安藤 365日、誰かの「ハレの日」を応援しているのですね。その1つのレンタル事業である『着物レンタル365』の特徴を教えてください。

松本 お客様の「ハレの日」を彩る着物ですから、大切な場に相応しい、上質な正絹の着物を1000点以上ご用意しました。特徴としては、30分以内で簡単に着物を決められるように、着用日で検索できるようにしました。帯・小物はプロがスタイリングし、画面で見たままのコーディネイトが届くことも選ぶ上では安心ではないでしょうか。サイズ展開も豊富で6サイズのご用意があること、そして実際に手にとって確認いただける下見サービスも行っております。

安藤 使う方の利便性が考慮されているのは嬉しいですね。着物初心者でも使いやすそうです。お手入れのサイトも同時にオープンされたとか。

松本 『着物お手入れ365』というネットでのお手入れのサイトも立ち上げました。呉服屋の倒産や廃業が相次ぐ中、着物に関しての相談やお困りごとを抱えているお客様も多いのです。呉服屋としても、着物を長く大事に着て欲しいという想いがあります。そこで、着物のクリーニング、染み抜き、仕立て、リメイクなど、着物のお困りごと・相談・依頼に職人が対応します。往復送料完全無料の見積もりサービスが特徴です。

安藤 長野県を中心に着物のファンを作ってきたたちばなさんが、新たに『着物レンタル365』『着物お手入れ365』という2つの柱で、全国へ発信していきます。最後に、今後の展望についてお聞かせください。

松本 呉服市場の疲弊とともに、着物の産地や職人さんも厳しい状況に立たされているのが現状です。呉服の文化を、日本の伝統産業を次世代につなげていくためにも、たちばなは全国というマーケットを相手にしていきます。まずは『着物レンタル365』『着物お手入れ365』を通して、全国へ発信。その後、現在は長野、新潟、山形県のみで展開している『たちばな』の実店舗やフォトスタジオ『シャレニー』も東京を始め、新エリアへの進出も行っていきたいと考えております。さらに『着物レンタル365』は美容院などの異業種と手を組み日本一の着物レンタルサイトを育てていくとともに、『着物365』ブランドの次の展開として、様々な形を考えています。1つは世界に向けた様々な展開です。2020年、オリンピックも日本で開催されることも決定し、ますます海外の方から日本が注目され、さらに、観光で日本に来る方も増えていくかと思います。そんな方々を日本の民族衣装である着物でお出迎え、おもてなしをしていきたいと考えています。さらに、インターネットは世界に広がっています。「着物レンタル365」ひいては「たちばな」を通じ世界に着物の文化を発信していきます。また、日本国内でも、フォトスタジオや美容院さんにご協力いただき、着物を気軽に着られる様、努力していきます。そして「着物を着る機会を増やしたい」というたちばなの願いを形にしていきます。たちばなは今後も、お客様と共に歩み、顧客支持率で日本一の呉服屋を目指します。

 

松本亮治
株式会社たちばな 代表取締役社長


 1998年、株式会社たちばな入社、2009年代表取締役社長に就任。経営理念を一新し、5つの日本一のビジョンを掲げ、顧客支持率で『日本一の呉服屋』を目指している。2013年7月、営業時代の現場での経験、想いを活かし、『着物365』ブランドを立ち上げ、ネットでのレンタルサイト『着物レンタル365』、お手入れのサイト『着物お手入れ365』をオープンさせる。SBCラジオでラジオパーソナリティーもつとめ、多くの方に着物文化を発信し続けている。

株式会社たちばな
〒380-8503 長野県長野市鶴賀緑町2214
TEL: 026-238-0242 FAX: 026-238-4466
オフィシャルサイト URL http://www.tachibana-group.co.jp/

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