社長の自叙伝

社長の自叙伝
2016年12月27日

坂美石工所 専務 坂川昌史 

福井県に昔から根付くお墓業界を変えたい! と日々奮闘している若者がいる。テニスでは、引退するまでの7年間、県ナンバー1の座を譲らないほど1位に対する強いこだわりを持つ。そして、父が病気で倒れたのをきっかけに家業を引き継ぎ、石材店でも県内トップを目指そうと決意。常にチャレンジし続ける坂川昌史に、サムライ日本プロジェクトの安藤竜二が迫った。

常識が通用しない業界に疑問

安藤竜二(以下安藤) 坂美石工所さんの歴史を教えてください。

坂川昌史(以下坂川) 私の父が1965年(昭和40年)に設立しました。今年で創業46年です。最初は石垣積(自然石)を主に仕事としていたのですが、施工の早さと正確さが口コミで広まり、護岸ブロック工事が軌道に乗りました。そこで、1978年(昭和53年)にお店を国道365号線沿いに出すことにしたそうです。その結果、建築関係の仕事も増加し、お墓までも頼まれるようになり、現在の坂美石工所となりました。その時点で大型機械の導入も済ませており、石選びからデザイン、施工まで全ての工程を自社で行う設備がありました。

安藤 お父様の跡を継ごうと思ったきっかけは?

坂川 跡を継ぐ気は全くありませんでした。幼いころから父の背中はよく見ていたので石材店の仕事がとても過酷で大変な事をよく知っていたのもありましたし、実は高校・大学ではテニスに力を入れていたので社会人になってからもテニスで全国大会上位進出を目指したかったので、大学卒業後、テニスクラブでコーチのバイトをしながら、自分のテニスの技術に磨きをかけていました。しかし半年ほどバイトを続けたある日「今は社員は雇わない」と言われたので「だったら…」と思い、自らバイトを辞めました。それで、継ぐ気がなかった家業を簡単な気持ちで継ぐことにしたんです。

 始めた当初は、現場で修行をしながら17時になったら家へ帰り、テニスでの全国大会上位進出のためトレーニングをしていました。ほんと石材店の仕事は2番目だったということを今でもしっかり覚えています。しかし、昨年の6月に父が脳梗塞で倒れまして、それを機にテニスを辞めたんですが、実はそれまでの2003年~2010年の間ずっと、ランキング1位の座を1度も開け渡しませんでした。その時は、「絶対にトップの座は譲らない」という気持ちで仕事とテニスを両立させていました。何をやるにしてもトップじゃないとイヤなんです。超がつくくらい負けず嫌いですし、勝利への強いこだわりもあります。だから、現在仕事にしている石材店でも絶対にお客様満足度ナンバー1を目指し日々努力しています。現に他の石材店には真似できないサービスを次々と考え実行しています。

安藤 この地域の石材店業界について教えてください。

坂川 福井の田舎ということもあり、一言で言うと昔気質の業界です。地元に根付いた石材店さんが多いので、お寺とのつながりもあって営業しなくても受注があります。だから、しっかりとした接客を勉強しない石材店が多いんですよ。私が跡を継いだ当初の坂美石工所も同じでした。会社でのお客様に対しての言葉遣いや、工務店さんとの話し方が全く出来ていなかったんです。敬語も話せない接客や、口約束で物事を進めるやり方に疑問を持ちました。

 また、お客様は、お墓の知識を持っていないのが普通です。だから、石材店に言われるがまま建ててしまう。私はそれは違うと思うんです。さらに、国内加工から中国加工が多くなり、価格競争も激しくなってきたから、どんどん儲け優先になり、お墓が本来持つ意味が失われてしまっていると思ったんですね。その現状に愕然として、28歳のときに他の業界が見たいと思い退社を決意しました。

 その後、大手携帯電話ショップに就職したんです。そこでお客様との接し方や電話の話し方、営業トークを学びました。そして3年目を迎えたある日、母から電話で「父のひざが悪くなって仕事がまわらなくなったから戻ってきてほしい」とお願いされたんですね。それで、「ココで学んだことを生かしてお墓業界を変えたい!」と思い、戻ることにしました。

想いをカタチにするお墓づくり

安藤 まずはどんなお仕事からされたんですか?

坂川 石材店はお客様にとって入りにくく、敷居が高いお店だと思うんです。何も知らずにお店へ入ると、買わされるんじゃないかと。そこで、自分たちから情報を発信してお客様に伝えていくことで、敷居を低くしたいと思いました。

 まず始めに着手したのが店作りです。当初はお墓も外に出ていなかったので、どんなお店かも分からなかったんですね。だから目を引くようなデザインのお墓などを、ある程度キレイに配置しました。それから、従業員の教育です。ここで携帯電話ショップでの経験が生きるのですが、電話のとり方からお客様との接し方までしっかりと指導しました。また、商談デスクの設置やお墓のミニチュアサンプル製作もしました。気になったところ、気付いたところはすぐに変えました。スピードが大事だと思ったからです。また携帯電話会社で働いていた時代に、とにかく新しいことにチャレンジしている企業の姿を見て、そこまでしないとお客様は来てくれないと感じたんですね。待ってるだけじゃダメなんです。自分から動かないといけない。それには武器も必要だと思って試行錯誤していたら、お墓の地震対策をしている『安震』さんに出会いました。

安藤 『安震』さんとの出会いについて教えて下さい。

坂川 全国には頑張っている石材店さんがたくさんあるはず。その方たちはどんな取り組みを行っているのかを知りたいと思い、WEBで検索をしていたんですね。いろいろ見ていると、『安震』というキーワードがたくさん出てくることに気付いたんです。それで「何だろう?」と思い、『安震』さんのホームページを詳しく見たら、是非お話を聞いてみたくなったんです。でも大きな会社だったので、今までだったらあきらめていたと思います。でもその時は、変えたいという気持ちの方が大きかったので、思い切ってメールを送りました。そうしたら、すぐに『安震』の光岡さんから電話を頂き、昨年の6月に加盟しました。現在、2ヶ月に1回勉強会を行っているのですが、そこで本来のお墓の在り方やお墓への想い。また、想いのお墓づくりという考え方を学びました。

 同年の12月には、全国優良石材店にも認定され、物売りの考えではなくお墓づくりに対する疑問や心配などにすべて答える石材店として走り出しました。私は、お墓本来の意味をしっかりと伝えてから売りたいと考えておりますので、こういったツールを使ってお客様と対話し、お客様の考えをまとめてあげられる、安心を与えてあげられる。これは、この地域の石材店さんにはない坂美石工所だけの強みだと思います。

安藤 自分から動いた結果が実を結んだんですね。

坂川 はい。実は『安震』さんに加盟する際、「先行投資はしない」と母に猛反対されました。でも、「チャレンジしないと何も変わらないから」と粘り強く説得したんです。そして5月には、30周年の記念イベントも開催しました。そこで、デザイン墓を多く展示して、お墓にはたくさんのデザインがあり、故人の想いをカタチに出来る時代になったんですよ。と情報発信する工夫をしたところ、70組130人ほどの来店がありました。また、そのタイミングで広告も出したんですよ。とにかく昨年は、様々なことにチャレンジしました。その成果が、今年の売り上げ倍増以上のペースという結果に繋がっていると思うんです。そして新しく従業員を雇うこともできて、やっとスタートしたという実感を得ました。

安藤 地域でイベントを開催することが敷居を低くすることに繋がってるんですね。他の石材店さんと違う取り組みは他にも?

坂川 1番力を入れているのはお客様との対話ヒアリングです。具体的に言うと、来店されたお客様のほとんどが、「お墓建てるのにいくらかかるの?」か「お墓を建てたいんだけど、どうすればいいの?」という2パターンなんですね。そこでまず聞くのは、『宗旨の決まった建て方 ・ 周りの墓地に合わせた建て方 ・ デザイン・オーダーメイド』の4つのうちお客様はどの建て方をご希望ですか? とヒアリングします。そうすると、ほとんどのお客様が「宗旨によって正しい建て方があるんですか?」となるんですね。そこから、本来お墓が持つ意味をお話します。他にもどうしてお墓を建てようと思ったのかという理由をしっかりお聞きし、故人またはお墓を建てられる方の想いをお墓にも表現できますよという 話などをします。既製品ではなく、お墓を建てる方の想いをしっかり聞いてからお墓のカタチを作っていく。ヒアリングの結果、従来のカタチのお墓になってもいいんです。大事なのは、お墓の選択肢を作ってあげることで、お客様が納得したお墓を建てることができることだと思うんです。

安藤 お墓に対する経験がないから、それを情報として伝えることでお客様が納得したお墓作りができる。ヒアリングは大事ですね。最後に、今後の夢をお聞かせ下さい。

坂川 価格競争になってしまっているこの地域のお墓業界の考えを、本来お墓が持つ意味を伝える考え方へと変えたいんです。故人と残された方々とを繋げるお手伝いをするのが、私たち石材店の役目。お墓と言うのは、残された者の心のよりどころでもあります。だから、お盆やお彼岸の時だけ訪れる墓地ではなく、もっと数多く訪れる墓地にしたいんです。それには、故人の想いをカタチにするお墓や、ご家族の近況をご先祖様に報告したくなるようなお墓が増えることだと思うんですね。そこで、お墓屋さんに見えない石材店を作りたいと考えております。デザインセンターという名の全く新しい店舗を作り、気軽に多くの人に足を運んでもらいたいと思っています。そして、幅広いデザインのお墓を多く展示し、まるで公園のような空間にしたい。出来るだけ敷居を低くすることで、多くのお客様に来店していただき、分かりにくいこの業界の事を立体的に発信できる店作りを目指しています。


坂川昌史 
坂美石工所 専務


 昭和53年1月13日、福井県にて生まれる。高校からテニスを始め、インターハイに出場。推薦で大学に入学。卒業した2003年から2010年の7年間、福井県のランキング1位を維持し続けた体育会系の墓石プロデューサー。家業である石材店を継ぐが、昔気質のお墓業界に失望し退社。大手携帯電話ショップで得た接客と営業力をもって家業に戻り、常にナンバー1を目指し、業界の常識を打ち破ろうと新しいことにチャレンジし続けている。


坂美石工所 
〒915-0856福井県越前市中平吹町1-5-4 
TEL:0778-23-5638 FAX:0778-43-5878  
URL: http://www.sakami.net

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