社長の自叙伝

社長の自叙伝
2017年03月20日

有限会社三浦園芸 代表取締役 三浦基彰

 ハイドロカルチャー(水耕栽培)に特化して観葉植物を育て、販売する有限会社三浦園芸。世界中11カ国から植物を輸入し、観葉植物の出荷鉢数は日本トップクラスだ。ハイドロカルチャーの新しい形を常に模索している代表の三浦基彰、その熱い想いにサムライ日本プロジェクトの安藤竜二が迫った。

日本にハイドロカルチャーを

安藤竜二(以下安藤) 三浦社長は二代目ということですが、先代が園芸の会社を設立したきっかけは何だったのですか。

三浦基彰(以下三浦) もともと園芸が趣味のサラリーマンだったのですが、独立精神が旺盛な人で、私の誕生を機に24歳で退職したそうです。その後、洋ラン農家で2年半ほどの研修を経て、1970年に100坪くらいの温室を作って2年ほど洋ランの栽培を続けました。しかし洋ランは1年のうち10ヶ月が栽培、残りの2ヶ月だけが売り時という、ビジネスモデルとしてはかなり偏ったものでした。洋ランだけでは経営が難しいということで、始めたのが観葉植物だったそうです。

安藤 当時、観葉植物は一般的なものだったのですか。

三浦 いいえ、ちょうど観葉植物の文化が日本に入り始めた頃で、父自らアジアへ買い付けに行った植物がよく売れたそうです。特にポトス、シンゴニウム、ドラセナの3種が大ヒットし、ガラス製温室を500坪建設するなど設備投資も行っていきました。しかし、より敷地の広い農家さんが同じ商品を栽培され、価格が崩れていってしまうのが悩みの種でした。そこで、簡単に真似されない栽培方法はないだろうかと目をつけたのが、当時は全然知られていなかった「ハイドロカルチャー」でした。

安藤 今や三浦園芸さんの代名詞ですが、そもそもハイドロカルチャーとは何ですか?

三浦 簡単に言えば、土を使わない「水耕栽培」です。「ハイドロ」は水、「カルチャー」は文化ですが、文化の語源が「耕す」、つまり「栽培」であることから水耕栽培となります。水耕栽培と言うと野菜の栽培と思われがちですが、園芸分野の中ではハイドロコーン(発泡煉石)を用いた栽培のことを言います。

 ハイドロコーンは粘土を1200~1300℃で焼いた粒状の人工培土で、1980年頃からオランダより輸入され始めました。特徴は半永久的に再利用でき、エコであること。そして一般的な園芸用土は有臭でカビ・雑菌の温床となりやすいのに対し、それらのリスクがほとんどなく清潔です。土に比べ軽い上に保水性も良く、水やりの回数が少なくて済みます。

安藤 ハイドロカルチャーの文化がなかった日本で、どのように勉強されたんですか。

三浦 父はヨーロッパ各国に渡って勉強をしてきたそうです。現地のホテルや病院では必ずと言っていいほど、ハイドロカルチャーの植物が置かれていました。日本でも衛生的な観点から、病院では土のある植物は置けなかったのですが、これなら病院に緑を置けるのではないか、そして靴を脱いで家にあがる清潔好きな日本人には必ず受け入れられるはずだと確信したそうです。

 当初は資材を輸入し、見よう見まねで始めたのですが、ヨーロッパの資材では規格が合わず、まずは専用の鉢作りからスタート。全体の生産量の1割くらいから導入を始め、失敗を繰り返しながらも徐々に栽培のコツをつかみ、10年ほどかけて100%ハイドロカルチャーにシフトしました。

 販売の面では、お客様の中にある「土でなければ植物は育たない」という先入観が大きな壁となり、当初は市場で受け入れられませんでした。そこで新しい販路を探さなければ、とデザイン性の高い植物を扱っていた貸し鉢(リース)業者さんと組み、商品開発を進め、販路を開拓。ホテルや病院などに卸させていただけることになり、中でも帝国ホテルに置かせていただけたことは大きく、それを機に受注が増えていきました。

日本のハイドロ文化を世界に

安藤 三浦社長が跡を継ごうと思ったきっかけは。

三浦 中学生の頃、ウチの商品が雑誌に載っているのを見て、スゴイことだなと思ったのがきっかけでした。実現はしなかったのですが、中学を卒業したらオランダにハイドロカルチャーの勉強に行くつもりだったんですよ。大学では園芸を専攻し、卒業後、片道切符で1年弱シンガポール・マレーシアに渡り、生産・販売・レンタルを行う商社で有名ホテルへの植栽などを手がけながら、ハイドロカルチャーの勉強をしました。アジアの後は、2ヶ月ほどかけてコスタリカ、メキシコ、グアテマラといった中米諸国、そしてドイツ、オランダ、ベルギーといった欧州諸国の農家を視察していきました。当時海外で作ったネットワークは今でも繋がっているものもあるんですよ。

安藤 生産だけでなく、直接販売まで行うというスタイルに海外で触れてきたんですね。帰国後はどうされたんですか。

三浦 三浦園芸に入り、まずは栽培面積を1200坪増やし、設備も増設しました。それがバブル崩壊の2年ほど前で、当時は土を使った高額な大鉢が人気だったのですが、それをやめて、家庭消費向けのハイドロの小鉢に変えていきました。おかげでバブルがはじけた時にもその煽りをそれほど受けることなく乗り切ることができました。これが大鉢の商品ばかりでは危なかったですね。

 また、自分の好きな植物を海外で仕入れて育て、それが市場で認められ、流行していくことには、大きなやりがいを感じられました。そういった品種が今でも市場に残っているのは嬉しいことですね。1998年には「土いらずのガーデニング」(ブティック社)という本も監修させていただき、自分が培ってきた知識を一冊に詰め込むこともできました。

 そして2003年、父に代わって代表に就任しました。

安藤 三浦社長と言えば数々の受賞歴がありますよね。

三浦 特に思い入れがあるのが天皇杯です。天皇杯と聞くとサッカーなどスポーツのイメージが強いかもしれませんが、毎年、(財)日本農林漁業振興会へも贈られているんです。私はその中の園芸部門で経営が認められ、2005年に受賞させていただきました。さらに天皇陛下と15分ほどお話させていただくことになったのですが、とにかく緊張してしまって、何をお話したのか全く覚えていないんですよ(苦笑)

安藤 経営としてはどんなことをされたのですか。

三浦 農場の規模を拡大しました。そこで意識したのは環境への配慮。大きくなったから環境負荷も比例するのではなく、例えば施設内に降った雨を、植物の水やりへ利用したり、地元の間伐材を使った薪が手に入りやすいので、薪を利用した暖房機を使うことで化石燃料の使用を抑えたり。薪暖房機によって全体の30%の化石燃料の削減に繋がりました。地元の林業の方にとっても、間伐材の買い手ができたと喜んでいただいています。

 海外での展開としては、弊社のアンテナショップを訪れていただいた中国人の方から「ぜひ中国で同じ店を出したい」とのお声をいただいたことがきっかけとなり、栽培方法の指導、関連資材を販売し、上海で5店舗をプロデュースさせていただいています。

 フィリピンでは現地の日本人の方と「アジアでハイドロを広めよう」と協力しあい、「Miura」の名前が付いたお店を5店舗展開しています。提携農場で商品の生産も委託しているので、そこで日本への輸出用に生産した余剰商品を無駄にしないため、現地店舗で販売しているのですが、ギフトユースで大量に購入していただけるお客様が多く、人気となっているようです。もともとはもったいないからと思ってやったことですが、現地生産者やスタッフの人達の生活が向上しているということを聞き、嬉しく思っています。また、現地の人が作る網状のランプシェイドを鉢のカバーにしようと思いつき、現地の生産者に発注しているということもあるんですよ。

安藤 ハイドロカルチャーにこだわり、築き上げてきた確かな実績と三浦社長の柔和なキャラクターが三浦園芸さんの強みですね! 最後に夢をお聞かせ下さい。

三浦 30年近くハイドロカルチャーをやってきた中で、ハイドロコーンはずっと輸入に頼ってきたのですが、これを国内産の素材で作れないかということで、地元で三州瓦を扱う新東株式会社さんと共同開発をし、日本産であり愛知産のリサイクルコーン(通称リサコ)を開発しました。全国の瓦のシェアの3分の1を誇る「三州瓦」の廃材を利用したもので、今までにはなかった明るい発色が特徴です。これが2010年、経済産業省が推進する地域資源の認定を受けました。

 日本建築を象徴する瓦を素材にしたリサコで、「メイド・イン・ジャパン」を世界に発信していきたいですね。ハイドロカルチャーの文化を世界に広め、それに関わる人みんなが幸せになれるような環境を作りたいと思っています。



 三浦基彰
有限会社三浦園芸 代表取締役


 大学卒業後に海外へ渡り、ハイドロカルチャーの栽培・販売を学ぶ。1998年、「土いらずのガーデニング」(ブティック社)監修。天皇杯をはじめ、数々の賞を受賞。国内にアンテナショップを持つ他、上海にプロデュース店舗があり、フィリピンにもショップを展開。世界の植物を日本全国に広めるため、世界11ヶ国の協力農家から輸入。2010年、三州瓦の廃材を再利用した「リサイクルコーン」を新東株式会社と共同開発。常に海外への展開を視野に日々奮闘中。

三浦基彰
〒444-3624 愛知県岡崎市牧平町字大門45番地
TEL : 0564-82-2651  FAX : 0564-82-3087
三浦園芸オフィシャルサイト URL: http://miuraengei.com

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